1 概要

 「福岡地区水道企業団地震対策検討委員会」による平成17(2005)年10月の提言(第8章 地震対応で詳述)を受け、平成19年11月に「耐震化整備計画」を策定しました。

 耐震化整備計画は、警固断層帯南東部を震源とする阪神・淡路大震災クラスの地震が発生することを想定して作成し、耐震診断を基本に、既存の基幹施設である牛頸浄水場を優先して、平成19年度から耐震化事業に着手しました。

 管路施設については、送水管を対象として、特に緊急を要する志免地区の老朽管更新事業や警固断層付近の耐震化を令和3(2021)年度までに完了させており、その他の区間は平成26年2月に策定した「管路整備計画」に基づき順次整備しています。

 

2 耐震化整備計画

(1)基本的考え方

 耐震化の基本的考え方は、①既存施設の耐震化 ②用水供給システムとしての対応 ③応急復旧体制の強化 ④情報システムの構築の4つを骨子とし、各施設の重要性、緊急性等を考慮して耐震化年次整備計画を平成19(2007)年11月に策定しました。

 また、地震対策検討委員会の提言を踏まえ、短期・中期・長期的対策の3段階での実施を基本とし、当企業団の用水供給システムの中で最も上流に位置する牛頸浄水場の耐震化を優先して行いました。

 なお、企業団本庁舎については「新耐震基準」(昭和56(1981)年6月1日施行)以前に建築された建築物であり、耐震改修の努力義務が課せられていますが、用水供給システムへの影響は少ないので、牛頸浄水場の耐震化完了後に検討することとしました。

 また、海水淡水化センター及び水質センターは、既に耐震構造物であり、対象外でありました。

 

 

(2)耐震診断

 平成17~18年度に既存施設の耐震化を図るため、牛頸浄水場の浄水施設17施設(土木12、建築5)について耐震診断調査を実施しました。判定の基準は、土木施設については、レベル1(震度5相当)、レベル2(震度7相当)、建築施設については、大地震(震度7相当)に対して判定しました。

 診断の方法は、既存資料の整理を行い、設計図等から計算する簡易診断の一次診断、さらに、実際に一部コンクリートの抜き取り、強度試験や諸調査を行う二次診断を実施しました。

 

(3)既存施設の耐震化

 耐震化計画の目標は、警固断層帯南東部を震源とする阪神・淡路大震災クラスの地震が発生することを想定して定めました。

 

ア 建築施設

 建築施設については、「新耐震基準」以前に建築された建築物について、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」に基づき、各施設の重要性・緊急性を考慮して耐震化計画を策定しました。

 対象施設は、牛頸浄水場浄水施設において、職員が昼夜常勤し、中央制御室を備え、被災時には情報収集の中心となる中枢施設である管理本館について、土木施設も含めて最優先で耐震補強工事を実施することとしました。また、短期間で補強工事が可能な薬品注入設備棟も併せて建築施設は2施設を対象としました。

 耐震化の目標は「新耐震基準」が求める耐震性能を満たすこととしました。

 

 この他、平成19年度に耐震診断を実施する送水ポンプ場として、次の9施設を挙げていました。

 

    月の浦ポンプ場、大佐野ポンプ場、田富ポンプ場、八田ポンプ場、浦の原ポンプ場、西ヶ浦ポンプ場、立花寺ポンプ場、畑詰ポンプ場、大隈ポンプ場

 

イ 土木施設

 土木施設については、機能・用途及び構造的に多様であり、一律な手法によって耐震対策を行うことは困難であることから、各施設に対する国の基準等により構造面からの強化を図り、また、重要性・緊急性及び運用上システムへの影響等を考慮して耐震化計画を策定しました。

 

 対象施設は、次の10施設です。

 

着水井、1系浄水池、2系浄水池、1系急速ろ過池・沈殿池、2系急速ろ過池・沈殿池、排泥池、濃縮槽、スラッジ貯留槽、洗浄排水回収槽、上澄水貯留槽

 

 また、耐震化計画の策定にあたり「水道施設耐震工法指針・解説」(社団法人日本水道協会)に準拠し、重要度の高い施設(ランクA)及びその他の施設(ランクB)の2つに分類しました。

 

 

ランクA:基幹施設で代替施設のないもの。浄水機能に関わる施設

着水井、1系浄水池、2系浄水池、1系急速ろ過池・沈殿池、2系急速ろ過池・沈殿池

 

※ランクAにおいて、同種施設で系統に分かれている場合は、能力の大きい施設をさらに重要度の高い施設としました。

着水井、2系浄水池、1系急速ろ過池・沈殿池

 

ランクB:代替施設があり排泥処理に関わる施設

2系急速ろ過地、沈殿池、排泥池、濃縮槽、スラッジ貯留槽、洗浄排水回収槽、上澄水貯留槽

 

ウ 管路施設

 管路施設については、主要幹線のうち一部が警固断層帯南東部を横断・並列し、丘陵部に囲まれた沖積・堆積層の砂質土に埋設されている下原系送水管を重要管路とし、優先して耐震化計画を策定しました。

 対象施設は、下原系送水管(大野城市南ヶ丘~大野城市曙町)です。

その他の管路については、更新・改良に併せ耐震性に優れた管種を採用することとしました。

 

(4)耐震化年次整備計画

 「福岡地区水道企業団地震対策検討委員会」の提言を踏まえて、短期的対策で整備する施設(概ね5年後の完了目標)、中期的対策で整備する施設(概ね10年後の完了目標)に分類しました。

 

ア 短期的対策で整備する施設(平成19年度~平成23年度)

建築施設(2施設):管理本管、薬品注入設備棟

       土木施設(3施設):着水井、2系浄水池、1系急速ろ過池・沈殿池

 

イ 中期的対策で整備する施設(平成24年度~平成27年度)

土木施設(7施設):1系浄水池、2系急速ろ過池・沈殿池、排泥池、濃縮槽、スラッジ貯留槽、洗浄排水回収槽、上澄水貯留槽

 

ウ その他

送水ポンプ場については、平成19年度の耐震診断の結果、耐震補強が必要な施設として次の3施設が対象となりました。

大佐野ポンプ場、八田ポンプ場、浦の原ポンプ場

3 管路整備計画

(1)計画の位置づけ

 管路整備計画は、平成20(2008)年3月に策定した「福岡地区水道企業団地域水道ビジョン」を上位計画とし、既に策定・実施していた「耐震化整備計画」との整合を図りつつ、管路整備に係る総合的かつ長期的な計画として、平成26年2月に策定しました。

 

(2)計画の目的

 バックアップ機能強化を図りながら、管路の更新・耐震化をより効率的、効果的に推進し、将来にわたって安全で良質な水道用水の安定供給を確保していくことが目的です。

 

(3)計画の検討

 計画の目的のひとつであるバックアップ機能強化については、災害・事故で当企業団の基幹施設が破損・停止した場合の対応と課題を整理し、課題ごとに最適な対策案を検討しました。

 また、管路の更新・耐震化については、布設土壌環境や地盤の状況、経過年数、管体老朽度等の調査結果を踏まえ、既設管路を総合的に評価し、整備の優先順位や整備手法を検討しました。

 

(4)計画の概要

ア 整備優先順位の考え方

 既設管路の評価結果に基づく優先順位に従って更新・耐震化を実施しながら、併せてバックアップ機能の強化を図っていきます。

 また、幹線の新設管整備区間は、新たに布設する管をメイン管(※1)に、既設管をバックアップ管(※2)に位置づけ、バックアップ管はできるだけ延命利用します。

 以上を踏まえ、優先的に実施する対策を整理し、下記の右の表により整備優先順位を決定しました。

 

※1 メイン管とは、通常時の送水を主として使用する管

※2 バックアップ管とは、メイン管が破損した場合等も、継続送水を確保するための管

イ 口径の考え方

 新設管の整備や既設管の更新にあたっては、下記の表の考え方に基づき管の口径を決定しました。

 

区間

管区分

口径の考え方

新設管整備区間

新設管
(メイン管)

安定供給水量に対応した口径を基本とする

既設管(バックアップ管)

更新時に将来の需要量に対応した口径へダウンサイジングする

単線区間

既設管

施設能力水量に対応した口径を基本とする

 

ウ スケジュールの考え方

 整備優先順位や実耐用年数80年以内の更新完了、年度毎の事業費の平準化等を考慮して整備スケジュールを設定しました。

 

(5)計画の概要

※単線区間のうち、ポリエチレンスリーブが被覆されていない路線や、布設後30年以上が経過している日送水量5,000㎥以上の区間を優先的に実施。

 

(6)管路整備計画図