1 事業の目的

 福岡都市圏は、水道用水の約3分の1を筑後川に頼っており、その大部分は福岡導水により送水されています。この福岡導水は福岡都市圏、及び佐賀県基山町への水道用水を供給する重要なライフラインです。

 福岡導水施設地震対策事業は大規模な地震の発生に対し、施設に必要な耐震性能を確保するとともに、老朽化が顕著な施設の補修を行い、将来にわたり、水道用原水の安定供給を図るため、施設を改築するものです。

2 事業の概要

(1)対策の必要性

ア 地震対策の必要性

 福岡導水は、警固断層(南東部)、水縄断層に近接しており、発災時には相当の影響が見込まれています。また、警固断層(南東部)は、現時点で断層の平均的な活動間隔に照らして地震発生が懸念される時期に入っていることや、平成17(2005)年3月に発生した福岡県西方沖地震の影響により、我が国の主な活断層の中では発災の可能性が高いグループに属しています。

 また、平成7年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)を契機に耐震設計の考え方が改定され、福岡導水施設の大部分はそれ以前に設置していることから、耐震性能照査の結果、一部の施設で地震対策が必要となっています。

 

イ 老朽化対策の必要性

 福岡導水は、通年通水が基本となっている一方で、バックアップ機能が不十分なため、通水を停止して内部から調査できる期間や施設も限られており、大部分の施設で十分な老朽化調査が実施できず、また、劣化が確認された場合も適切な補修、補強が十分に実施できない状況となっていました。

 通水開始から約40年が経過し経年劣化が想定される中で、過去に漏水事故が発生するなど将来にわたり安定的な水の供給を可能とするための対策が必要となっていました。

※漏水事故等については、第8章第3節 2福岡導水事故(平成19年5月発生)及び(平成22年8月発生)を参照してください。

 

 

【福岡導水施設整備検討委員会】

 福岡導水においては、進行する施設の老朽化及び今後発生すると想定される地震に対し、できる限り施設を良好に保ち、将来にわたり安定的に水を供給するために必要となる施策について、経済性を含め多角的に検討する必要がありました。そのため、施設の耐震対策、長寿命化、施設更新等の長期的な施設構想及び対応策に関して指導・助言を受けることを目的に、学識経験者等による福岡導水施設整備検討委員会が平成25(2013)年に設立されました。

 委員会においては、福岡導水施設の耐震化対策、長寿命化、施設更新等の長期的な施設構想及び、対応策に関する検討を実施し、現時点でリスクが高い施設については、対応策を可及的速やかに実施されるよう平成28年10月に水資源機構へ提言されました。

 

【提言内容(要約)】

 福岡導水施設は老朽化が一定程度進行、最も近接する警固断層帯を震源とした地震は、政府の地震調査研究推進本部において、今後の発生確率が高いと位置づけられていることから、今後も施設点検等を継続的に実施するとともに、現時点でリスクが高い施設については、対応策を可及的速やかに実施されるよう提言する。

 

 

(2)事業の内容

・大規模な地震に対し、所定の耐震性能を満足していない施設において耐震補強等を実施し、必要な耐震性能を確保し、また、老朽化が顕著な施設について補修を行うことにより、施設の健全性を確保します。

・通年通水が基本であるため、耐震補強・補修の実施にあたり、通水の切替が必要な施設に対し併設水路を新設します。併設水路は、地震対策事業完了後も存置し施設の維持補修が可能となるようバックアップ機能の強化につなげます。

 

【事業の概要】

・事業主体  独立行政法人水資源機構

・予定工期  平成30年度~令和14年度

・事業費   約290億円

 

【事業の経緯】

平成25年10月

福岡導水施設整備検討委員会設置

平成28年10月

福岡導水施設整備検討委員会による水資源機構への提言

平成30年6月

筑後川水系水資源開発基本計画 一部変更(国土交通省)

平成30年11月

事業実施計画認可(厚生労働省) 

福岡導水総合事業所を開所 事業着手

 

 

事業計画概要図